0211事変

イギリスで行われている世界会議の最終日、何故か会議前にイギリスの屋敷に集合だと連絡を受けた日本は行き慣れた道を通りイギリスの屋敷へと足を運ぶ丹精された庭はいつもなら瑞々しい緑に囲まれているのだが今日は降り積もった雪によって白一色となっている、雪を踏みしめながら重厚な造りの扉の前に立つと扉が一人でに開いた、イギリスの屋敷ではよくあることなので大して日本は驚かない、真偽は定かではないが妖精達が開けてくれているのだと伝え聞いた日本は姿が見えない相手にも関わらずに律儀にありがとうございますと言ってから扉をくぐる、屋敷の中は外と違ってとてもあたたかい、その温度に一息つき日本はいつもなら居る筈の執事やメイドが一人もいないことに若干の違和感を覚えながら指定された大広間まで歩く、イギリスの屋敷は幾度となく訪れているので迷子にはならない、広間の扉の前に立った日本はマホガニー製の扉の取っ手に手を掛け扉を開くと―――

『Happy Birthday!!日本!!』

世界会議で顔を突き合わせていた国々からそう言われ目を白黒させている間にそれぞれの手に握られているクラッカーが一斉に鳴り響く、破裂音の後宙を舞うカラフルなリボン、上から紙吹雪まで降ってきて日本はリボンと紙まみれになりながらも出迎えてくれた大勢の国々に向かって微笑んだ





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事前に日本へと伝えられていた世界会議の日程はサプライズパーティーの為に一日多く伝えられていたのでそもそも今日は会議の日ではない、このサプライズパーティーの発案者はアメリカだ、各国が一か所に集まるまたとない機会はこのパーティにうってつけだった、アメリカのこの案に祝い事や祭り事が好きな各国は大いに賛同し開催地であったイギリスの屋敷を会場にすることに決まった、いつもならアメリカの案に反対するイギリスだったがこればかりは反対のしようがない、寧ろ自ら陣頭に立ち進んで屋敷の飾り付けの指示などを行う程この案に乗り気だった。

綺麗に飾り付けられた会場で日本は各国からの祝いの言葉と次々と渡されるプレゼントを受け取った後フランスが腕によりをかけて作ったという料理の数々に舌鼓を打つ、それから会場に運ばれてきた巨大なケーキのろうそくを吹き消したり、各国と談笑したりと忙しくも楽しい時間を過ごした、祝い酒だと各国に進められいつもより多くアルコールを摂取した日本は火照った体を冷ます為外へ続く扉をくぐりテラスへと出る、冷たい夜風が気持ちいいと思ったのも束の間少し経てば流石に冬空の下に居ることに寒さを覚え会場に戻ろうとした その時だった会場からバリン、と窓ガラスを割って何かが飛び出て来た、星型の形をしたそれは真っ直ぐに日本目がけて降ってくる

「日本!」

慌てた様子で星型のステッキを持ったイギリスが日本に声をかけてももう遅い、急展開についていけずその場に留まる日本と星型のそれは見事にぶつかってしまい、ぼふん、と白い煙が立ち上る、イギリスが傍へと駆け寄るが風で煙が流されてもそこにはもう誰の姿も無かった





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「おい、起きろ」

聞きなれた声で日本の意識はゆるりと覚醒する、薄らと瞳を開いて目に飛び込んできたのは予想通り金の髪と緑の瞳だ、だがそれはいつものイギリスの姿の筈なのに日本に違和感を齎すどこに違和感を感じているのか問われても今はまだ具体的に答えられないが

「東洋人、チャイニーズか?スパイにしては間抜けな奴だな」

黒い革手袋に包まれた手で日本の顎を掴み相手を見下ろすとイギリスは嘲笑を浮かべる、日本の中で違和感がぶわりと膨れ上がった普段のイギリスならば日本に対してこのような扱いは絶対にしない、しかもよくよく見てみればイギリスの着ている服が違うのだ、先程まではワイシャツにスラックスというごく普通の装いに対して現在はシャツの上に時代錯誤も甚だしい金糸で装飾がなされた豪奢な赤いコートを羽織っている状態だ、だが日本はこのコートに見覚えがあった一昔前日本はこのような装いをした男と同盟を組んでいたのだから、まさか、日本の背に嫌な汗が流れる、そんな筈がないと自分の考えを打ち消そうとしても気を失う直前自分に当たった物体、星型のあれはイギリスがよく奇跡を起こす際ステッキの先から出てくるものに酷似している、事実似ているだけではなくその場に本人が居たことから本物だと断定した方が良いだろう、イギリスは奇跡と称して国を若返らせることが可能だった、時間を操る術を持つ彼ならば出来たとしてもおかしくはない

「一つ、質問させて下さい」

疑問を確信に変える為日本は口を開く

「あなたの名前は『イギリス』ですか?」
「違うな」

はっきりNOと言われて既に日本は確信していた

「俺の名は大英帝国だ」

自分がタイムスリップしてしまったことに




2012.02.11





あとがき
(誕生日に祖国がタイムスリップする話でした、続きます)