Shoot the Bull's eye

本日の世界会議はイギリスで行われる、私は至極憂鬱な気持ちで会場を訪れた、別に世界会議が嫌な訳では無い、問題なのは世界会議に出席するという事はあの人と必ず顔を合わせる事になるからだ、これは顔も見たくない程嫌っているという意味では無く顔を合わせると厄介な事になるから嫌だという意味が正しい、その人物とは今までは特別親しい訳でも仲が悪い訳でもない、会議場で会えば挨拶する程度の関係だったのにどうしてこうなったと私は頭を抱えたくなった、顔を合わせないようにするのは会議に出席するから無理だ、会議中というよりも問題なのは休憩時間かもしれない彼に捕まるとなかなかその拘束から抜けられずそのままずるずると昼食や会議終了後の夕食までも共にしてしまう事もあった、今日の休憩時間は彼に捕まらない事を最優先に行動しようと決心したその時だった、なるべく関わらないようにしようと考えていた当の本人が向かいから歩いて来るのが見えて思わず私はその場で固まってしまった、逃げようとしてももう相手の視界に入ってしまったから無理だ

「日本、会いたかった」

事の元凶は嬉しそうに私の名前を呼び機嫌の良い猫みたいに目を細めて私に近づいてくる、立ち止まった私との距離を詰めてイギリスさんは私の右手をそっと掬い上げて恭しい態度で手の甲に口付ける、突然のキスに硬直する私を置き去りにしてイギリスさんは唇を付けたまま腰に別の方の腕を腰に回し私の体が相手に密着するように抱き寄せた、近過ぎる距離に彼が付けている香水の匂いが鼻腔をくすぐり嫌でも自分を抱きしめている人物が彼なのだと強烈に認識させられる、抱き寄せた後イギリスさんはその緑の瞳を伏せ手の平にゆっくり唇を寄せる、半端無く顔が整っている為瞳を伏せたその表情は同性の自分から見てもどきりとする程色気を放っている、これだからイケメンは、と内心毒を吐いてしまうのも仕方が無い事だろう、私に見せつけるように手の平にちゅ、と吸いついたイギリスさんはそのままの体勢で瞳だけ私に向けて囁く

「今日も一段と色っぽいな、スーツ姿が目の毒だ」

手の平を解放したイギリスさんは顔を近づけ私の輪郭をその長い指でつつ、となぞっていく、妖しげな手付きにぞわりと肌が泡立つのを感じて私は思わず小さく舌打ちをした

「日本の姿を他の国が目にするだけで嫉妬しそうだ・・・俺だけしか知らない場所にお前を隠したくなる」

切なげに溜息をついてイギリスさんは片腕を私の背に回し拘束をより強固なものにしてもう聞き慣れてしまった変わり映えのない言葉を私に贈る

「このままずっとお前をこの腕に閉じ込められたら良いのにな、好きだ、日本・・・」
「善処します・・・取り敢えずさっさとこの腕を離して下さいませんか」
「素っ気ない態度も魅力的だがたまには甘えてくれて構わないぞ?」

彼の放つ一見すれば甘い言葉は私の眉間に皺を寄らせるのが大変得意なようだ、今日も今日とて変わらないイギリスさんの態度に会議が始まる前から私はどっと気疲れしてしまう、そう捕まると厄介な事になるというのはこの事だ、何故かイギリスさんは月の初めからそれまでの私に対する態度を豹変させ会うたび私を口説き続けている、本当にもうどうしてこうなった、そういう事は女性に言えと思うような嫌に甘い言葉の数々、過剰なスキンシップ、これはからかわれているのだろうか、だとしたら彼は酷く性質が悪い、月の初めから今日までその行為は止む事が無いし更にエスカレートしてきているように感じる 最初はうろたえた私だったが今ではそのスキンシップにも大分慣れてしまった 、悪ふざけにしては度が過ぎているがイギリスさんが何をしたいのかさっぱり私には分からない、だが何にせよこんな爺をよくもまあ飽きもせずに構ってくれるものだ、現実から目を逸らし頭で別の事を考えていた私だったがふと視界に向かいから歩いてくるドイツさんが見えて気分が上を向く、彼ならこの状態から脱する手助けをしてくれるだろう、流石に鳩尾でも殴れば彼も私を解放するだろうが暴力に頼る程事態は切迫してはいないし私もそれは望まない、だとすればここは申し訳無いがドイツさんの助けを借りるのが最善だろうとドイツさんの方を向き彼の名前を呼ぼうとした所でイギリスさんは私の輪郭に触れていた指を移動させガッ、と私の顎を掴み強制的に顔の位置を元に戻した、端正な顔立ちが唇がつきそうな距離に近づいて来て思わずたじろぐ、一気に不機嫌な表情になったイギリスさんは穴が空きそうな位強く私を見詰めて

「Just look at me」

といつになく低い声で呟いた、鼓膜を溶かしそうな甘い低音に思わず体がびくりと震える、もう見慣れた光景になってしまったのかドイツさんは私達にあー、会議時間には遅れないように、とだけ告げてさっさと会議室に歩いて行ってしまった、廊下に取り残された私達の邪魔をする者は残念な事に存在しない、爛々と光る緑の瞳は私を捉えて離さない、これは今日も会議が始まるぎりぎりまで過剰なスキンシップの嵐だろうと私は人知れず溜息をついた





2011.10.23





あとがき
(続きます、片想いの英は今まで何度か書きましたがどの英も今まで積極性に欠けているので今回は積極的(当社比)な英を書いていこうと思います、あ、ちなみに英語の台詞の訳は「俺だけ見てろ」になるはず、です、英語に明るくない管理人なので合っているのか物凄く不安ですが間違っていてもスル―して頂けるとありがたい、です・・・)