Shoot the Bull's eye

カラン、とグラスの中のロックアイスが揺れる、イギリスは手に持ったグラスを一気に呷るとテーブルにうなだれるように突っ伏した、隣でつまみを食べながらウイスキーをこくりと飲んだフランスはそれをげんなりとした顔つきで見る、突っ伏したまま中身を混ぜるように片手でグラスをくるくると回しだしたイギリスを見てフランスは今日も自分が止めても泥酔する程イギリスは酒を飲むのだろうと溜息をついた、フランスが今日の様にイギリスに無理矢理引っ張られパブへと連れて来られるのは珍しく無い、百年越しの想い人である日本に振り向いて貰おうとイギリスは色々画策しているようだが本人が意地を張ったり照れたりするお陰でなかなか上手くいかない、最近では話をしようと思った時に大体アメリカに邪魔され食事に誘おうとした時に元枢軸のメンツに先を越されたりして会議場に来た時の挨拶程度しか出来て無い状態だ、傍から見ているフランスでさえ焦れったくなる程の進展の無さは本人が一番自覚している、これは自棄酒が飲みたくなる気持ちも分からないでも無いと元来面倒見の良いフランスは俺ってお人好しだよなあと思いつつもこうしてイギリスの愚痴と自棄酒に何度も付き合っている

「日本ってさ・・・エロいよな・・・」

人々の話し声で五月蠅い店内でもイギリスの言葉はフランスの耳にしっかりと届いた、だが脈絡無い言葉に驚く程フランスも素面では無い、続きを促すように首を傾げイギリスの言葉を待つ、イギリスは少し体を起こし頬杖をつくと酒で染まった目元を細めてぺろりと下唇を舐めた

「あれはやばいだろ、ぴしっと着たスーツ姿なんか反則だよな、あのスーツ姿見るとなんか、もう無性にぐちゃぐちゃに服装乱したくなる」

確かにそれは分かるかもしれないとフランス思ったが敢えて黙る事にした、以前このような話をイギリスに振られて反応を返すと、お前なんかの想像で日本を穢すな、とドスの効いた声で言われ二三発程お見舞いされた事があったからだ、そういう自分は散々脳内で日本のあられも無い姿を思い描いて置きながらこの態度である、理不尽なのは相変わらずだがあの時フランスはあんまりだと思った、イギリスはまたグラスをくるくるとまわして中の氷を憂いを帯びた眼差しで眺める、これだけ見たら絵になるような光景かもしれないがイギリス自身の言葉がそれらを全て台無しにしている

「ぐちゃぐちゃにした後あの澄ました綺麗な顔にぶっかけれたら最「あー少し黙ろうなイギリス」
「お前だってそう思うだろ・・・日本ってスーツの時全然服装乱さないから、ちょっとネクタイ歪んでたり、シャツのボタン一つ留め忘れたりした時の色気は凄まじいものがあるよな、あー今すぐ押し倒してえ・・・」
「それ犯罪だし、日本はそう易々と押し倒せないと思うけど」
「何でだよ」
「柔道、剣道、忍者」

ああ、とイギリスは頷いてこくりとウイスキーを一気に呷る、フランスが止める暇も無かった、ダン、とグラスを乱暴に机に置いてイギリスはがしがしと自分の頭を手で乱す

「くそ、本当に手強い相手だよな・・・おいフランス」
「何?言っとくけど俺犯罪に加担するのは嫌だからね」
「あ?犯罪?何の事だよ」

心底分からなさそうに首を傾げるイギリスにフランスは内心ほっとした、あまりにも脈が無い事に痺れを切らしたイギリスがあの手この手で日本を手込めにする様をフランスは脳内に鮮明に浮かび上がらせる事が出来てしまうが故の懸念である

「お前の意見を聞いてやるから有難く思え、日本と俺が恋人になる方法を考えろ」

上から目線、人に物を頼む時だとは思えない態度、それでも今まで愚痴こそ零してきたもののフランス相手にどうすればいいか相談して来た事等一度も無いイギリスがフランスを頼ったのだ、態度には出して居ないが内心では本当に切羽詰まっているのだろう、あまり追い詰めて暴走されても困る、ここは自分が一肌脱いでやるしかないとフランスは思った

「日本とねえ・・・」

考えてすぐに思い浮かんだのはアメリカの無茶に付き合わされている日本の姿だ、日本は昔から押しに弱い、ここを巧く突けば少なくとも今よりかは断然進展もしそうに思えた

「日本は押しに弱いからな、押して押して押して押して押しまくればあるいは・・・」
「それで良いのか!控え目だから押すと引かれると思って控えていたが、そうか押しまくっていいのか!」

何か吹っ切れたようでイギリスはそれまでの様子と一変して瞳をぎらつかせる、元々攻める方が得意の気質の上自分でもこのままではいけないと何か思う所があったのだろうフランス言葉をするりと鵜呑みにしたイギリスは一気に火が付いたようだ、上機嫌にアルコールを喉奥へ流し込む、活き活きするイギリスを見てフランスは溜息をついた

「お前攻めるの好きだからね・・・でもやり過ぎは良くないから期間を指定した方がいいな」
「期間?」
「そう期間、まあ大体一ヶ月が妥当かね、一ヶ月押しまくって何も手ごたえが無ければ本当に脈無しって事で最悪諦めた方が良いかもな」
「上等だ」

先程ほろ酔いでだらけた姿を晒した上ぶつぶつと猥談やら何やらを言っていたイギリスはどこにやったのか今にも舌舐めずりしそうな凶悪な顔つきでイギリスは言った、その表情はフランスが嫌と言う程見て来た海賊時代の頃のものと酷似している、勝利を渇望し、己の望むものが手に入るまで執念深く狡猾に立ち回るあの時の顔だ、一つ違うのはあの頃の若さ故の青さが抜けた事だろうか、厄介な相手に日本も好かれたものだ、人でも国でも期間を設けた方がやる気になると思いフランスは提案したがイギリスは予想以上に乗り気になったらしいそれが吉と出るか凶と出るかは本人次第だ

「必ず日本の心を射止めて見せる」

両の目に強い光を宿してイギリスは言った





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それからイギリスは意地も照れもかなぐり捨てて日本に対する猛烈なアプローチを始めたそれはたちどころに他国に知れ渡る事になり今ではイギリスの想い人が日本であると知らない方が可笑しい程だ、日本を想うのはイギリスだけでは無いライバルである他国への牽制でもあるその行為は日増しに激しくなった、だがそれと反比例するように日本のイギリスの扱いは日増しにぞんざいになっていく、情熱的に行動するイギリス、至って冷静に対応する日本、これはイギリスも分が悪いとフランスは思い何度か態度を少し改めてはどうかと言ったが本人は、いや、これでいい、と言うだけで取り合わない、終いには黙って見ていろとまで言われたのでフランスは傍観を決め込む事にした

「以上で世界会議を終了する」

先月末の回想しているうちに終わってしまった世界会議は相も変わらず進展が無い、長時間椅子に座り続けた為固くなった体を解きほぐすようにフランスは伸びをして件の二国を見遣る、イギリスは会議終了時すかさず日本に話掛け食事に行く為にまるで獲物に飛びかかる前の肉食獣のように相手を見据え構えている、一方日本はイギリスに捕まらないように終了と同時にすかさず会議場を後に出来るように書類を全て鞄の中に入れ準備している、これは今日も恒例の攻防戦を見る事になりそうだ、イギリスは議長なので一番前に居る、円卓に座る日本との距離は少しあるが日本もあいにく出口に近いとは言えない位置だ、さあどうなるとフランスは苦笑する

「ちょっと待った!!帰る前に君達にお知らせがあるんだぞ!!」
「ん、何だアメリカ?」

帰る準備を始めた各国はイギリスと同じくホワイトボードの前へと出て来たアメリカによって作業を中断させられる、アメリカは快活に笑い瞳を輝かせながら言った

「一週間後俺の家でやる世界会議の事なんだけどさ、丁度その時期ハロウィンと被ってるから世界会議が終わったら俺の屋敷でハロウィンパーティーをやるんだぞ!」

勿論君達も参加するだろ?と問い掛けられて首を横に振る者はいない、会議終了後はその国主催のパーティーやら飲み会が開かれる事が少なくは無いしアメリカの家で世界会議が行われる時はアメリカ自ら積極的にそれらを行っている、会議に出席した国は予定が入っていない時は大抵それらに参加しているので飲み会がハロウィンパーティーになった所で特に反対意見など出ようがないのが現状だ、それに気を良くしたアメリカは満足そうに頷いて先程よりもにこやかに笑う

「よしそうこなくっちゃ!折角ハロウィンなんだから皆屋敷で着替えて仮装するんだぞ!衣装が無かったら俺の屋敷にある衣装を貸すからそれでオーケーさ!!」

仮装という言葉にピクリと反応したのが数国、誰なのかは言うまでも無いだろう

「よーしそれじゃ当日を楽しみにしておくと良いんだぞ!はい解散!」
「お前が仕切るなよ・・・」

議長のイギリスを差し置いてアメリカが解散宣言をして各自帰る準備をする、ちなみに今回の世界会議は2日続けて行われるので打ち上げは明日だ、アメリカに呆れた視線を送るイギリスは日本が素早く席を立った事に気付かない、今回は日本の勝ちかとフランスはイギリスを見たがその視線に気付いたイギリスはにやりと口角を上げる、その手の中には何かのスイッチが握られていた、それが何のスイッチなのかは日本が出口の扉を開けようとしても扉が一向に開かない事から大体推測できる、ここまでやるかと呆気に取られるフランスにイギリスは

「All's fair in love and war」

そうだろ?と言い残し日本の元へ優雅に歩いて行った





2011.10.25





あとがき
(主催国権限で建物のセキュリティをいじるイギリスでした、また英文使ってしまいましたが今回はことわざをそのまま引っ張って来ただけなので安心して乗せました、はい安定のコピペです)