いつだってどんな時も俺の隣にはお前が居た、お前が居てくれたから今の俺がある、お前無しの生活なんてもう考えられないんだ、友情が慕情そして強い恋情へと変わったのはいつだったろう、笑って欲しいけど泣かせてみたい、大事にしたいけれど滅茶苦茶にしたい矛盾する心情、理性と本能の間に板挟みになって苦しい、でも俺がお前を思っている事を告げて今の関係が壊れるのが怖い、無条件に俺に笑いかけ一緒に過ごしてくれるこの幸福な時間が無くなってしまうのかと考えると後一歩が踏み出せなくなる、でもどうしようもなく好きなんだ、だからそんな無防備な姿を俺に見せるな、必死に抑えている本能が理性に牙を立て食い破ってしまいそうなんだ、今までいつも通りの俺を演じて良い友人であろうと努力してきただがそれは酷く危ういバランスを保ちながらのもので些細なきっかけでそのバランスは簡単に崩れてしまう、もう限界だ、すうすうと寝息を立てる幼馴染のあどけない寝顔にどれだけ自分が汚れているか思い知らされてズキリと胸が痛む
(ごめんな、菊・・・)
心の中で俺は謝って目の前で無防備に眠る幼馴染の唇に自分の唇を押しつけた、今までずっと触れる事を夢見たそこは想像より遥かに柔らかくて何度も角度を変え俺は夢中でその唇を貪った多少寝苦しそうではあるが一向に菊が目覚めないのをいい事に俺はその口内に舌を入れ菊のそれと絡ませる反応が無いのは少し虚しい気がしたがそんな事よりも寝ている幼馴染を好きにしている背徳感や征服感に背筋がぞくぞくとする、体が熱い、息が上がる、無意識に相手の衣服の下に手を這わせようとした時、んん、と菊が唸り俺はやっと我を取り戻す、危なかったそこまでするつもりじゃなかったのに本能のままに動いた体はどこまでも貪欲だ、どれほど自分はこの幼馴染を求めているのだろう再確認した事実に胸が痛む、唇を急いで話すと菊と俺の間に銀の糸がつながっていてひどくいやらしかった、さっき唸っていた菊だったが起きる気配はない、最後に俺は触れるだけのキスをしてぼそりとその耳元で囁く
「好きだ、好きなんだ菊・・・」
眠っている相手にならこんなにするりと言葉が出てくるのにな、自嘲気味に俺は口元を歪めた、眠るお前はどこまでも清らかで唇を奪った罪悪感が更に増した、ずれていた菊の布団を掛け直し俺は部屋を去りベランダに出た冷たすぎる夜風が身を苛むが今の俺にはこれ位が丁度良い、こうでもしなければドクドクと早鐘のように脈打つ心臓も、上がった体温も元に戻りそうになかったから
「あー星が鬱陶しいな」
お前は悪くない悪いのは全部俺だ、ごめんな菊、好きになってごめん
震える指先でそっとさっきまで触れられていた唇を撫でる、どうして何で、今までそんな素振り一度も見せられた事がないから知らなかった、いやよくよく考えてみれば彼の私に対する態度は最近どこかぎこちなく違和感は感じていたけれどまさかこんな風な事になっていただなんて誰が想像出来るだろう、今まで唯一無二の親友だと思っていた相手が私の事を恋愛感情をもって見ていただなんて
『好きだ、好きなんだ菊・・・』
甘く掠れた声が耳から離れない薄眼を開けて見たアーサーさんは顔を上気させ目を切なげに細めてどこか苦しそうだった、彼から言われた好きは明らかに友情のそれとは違う、言葉だけでなく寝苦しさの中ふと意識を覚醒させた時に感じた口内の感触、されていた行為からもそれは明白な事だ、知覚した瞬間自分の体からザ、と血の気が引いた、アーサーさんの思いを知って私はこれから先どうすれば良い、何事も無かったかのように今まで通り過ごすのか、それとも彼を拒絶するのか受け入れるのか、唐突に訪れた事態に私が感じたのは彼に対する漠然とした恐怖だった、今まで友人の中では誰よりも彼の事を理解しているつもりだった、言葉も碌に喋れない頃からずっと一緒に居たのに今の彼はまるで知らない人のように感じて怖い、今まで通りに彼と過ごすという選択肢は削除した方が良さそうだもう多分今までのように普通の友人として彼を見れない、未知への恐怖、戸惑い、彼自身を理解していなかった自分に対する憤りと、変わってしまうであろう穏やかな日々に別れを告げなければならない事への悲しみ切なさ、全てがぐちゃぐちゃになって処理しきれなくなったそれらは涙として私の頬を伝う
ごめんなさい、アーサーさん、ごめんなさい
俺達の意思に反して事態は加速度を付けて動き出す、その先の味は酸いか甘いかどうなるのかはまだこの時の俺達には知る由もなかった
2011.08.17
あとがき
(アーサーもしくはイギリスが菊もしくは日本に片思いの設定が大好きです、その思いが暴走してイギリスが日本に片思いの話を二つ(ギャグverとシリアスver)アーサーが菊に片思いな話二つ(ギャグverとシリアスver)の計4通りの話をハッスハスしながら考えてその内の一つ、朝→→→菊でシリアスな話をちゃんとした形にしてみました、自己満足ですが大変楽しかったです^q^)