ドサリ・・・ソファに背を強かに打ち付け私は息をつめる、どうして何で私は何も彼の気に障るような事は言っていない筈だフランスさんは私が逃げられないように顔の両側に手をついて私を拘束する、急に押し倒されたせいで軽く混乱していた頭だったが彼の瞳を見れば今の状況が悪ふざけでも何でもない事が分かるいつも穏やかな光をたたえている彼の瞳は冷たくいつになく硬質な光を宿している、彼のこんな表情を私は初めて見た、茶目っ気と愛嬌のある彼が今はまるで別人のようだ
「フ、フランスさん止めて下さい」
とにかくこの状況を脱しなければ、と彼を押しのけようと胸に手を当て力を込めるが彼は予想に反してびくともしない、普段意識する事は無かったがここまで力の差があったのだとまざまざと思い知らされ少し怯んだその隙にフランスさんは私の両手を頭上に纏め上げ拘束する、ギリリ、と強く握られ両の手が痛む、こうなったら足をばたつかせてと考えたがフランスさんは私のふともも辺りに腰を下ろし体重をかけているので足を自由にする事は出来ない、完全に拘束され逃げ道が無くなっていると私はこの時初めて気が付いた
「フランスさん離して下さい、一体どうしたんですか?」
私達はついさっきまで他愛無い話をしていただけだそれが一体どうしてこんな状況にならねばいけないのだろう彼の行動は突拍子が無さ過ぎて私には訳が分からない、尋ねると彼はくすり、と微笑んだ、まるで情事の最中を連想させる妖艶な笑みは私の背筋にぞわりと悪寒を走らせた
「分からない?日本・・・」
額と額をこつんと合わせフランスさんは私に囁く、少し動いてしまえば唇と唇が付きそうなこの体勢に私の体温が一気に上がる
「日本はいつもイギリスイギリスイギリス・・・ねえどうして俺の前でそんなにイギリスの話をするのかな?」
「フ、フランス、さ・・・」
「もしかして俺を焚き付けてる?」
「ッ!!」
する、と着物の合わせ目からフランスさんの手が入り体のラインをなぞられる、あまりの出来事に目を白黒させる私に構わずフランスさんの手付きはどんどんエスカレートしていく
「そんな訳ないか、そう思ってるなら俺の家にのこのこ来たりしないよな、俺の事ただの友達だと思ってるから俺が誘っても来てくれたんだよね」
「フランスさんいい加減にして下さい、やめ、離して!!」
「俺の気持なんて全然知らないから、なあ日本」
必死に彼から逃れようともがいている私の耳元でその行いを嘲笑うかのようにフランスさんが言葉を紡ぐ
「俺は惜しみなく与える愛し方も出来るけど必要なら奪うような愛し方だって出来る、まあ今からは奪うようなじゃなくて奪うんだけど、ね」
奪う?何から何を、フランスさんは一体何の話をしている?私には分からない混乱する私を一人差し置いて事態は悪い方へ悪い方へ進んでいく、フランスさんの端正な顔が除々に私の顔に近づいてくるのを私は碌に抵抗も出来ないまま受け入れる、キスされてからも悪あがきで体をよじらせる私をフランスさんは両手を拘束する方とは違う手で押さえつけ完全に制圧する、フランスさんは口の隙間から舌を滑りこませいやらしく絡め合わせ好き放題私の口腔を荒らす、激しく奪う様な口付けの間息継ぎが上手く出来ない私は酸欠で意識がぼんやりしてくる、それを見計らったかのようにフランスさんの口が離れ私ははくはくと必死で体内に酸素を取り入れる、その間フランスさんは懐から小瓶を取り出しその中身を一気に煽ると再び私に口付ける、口付けの最中フランスさんの方からとろりとした甘い液体が流れ込ん来て私は眉を寄せる、こんな状況で飲まされる物だどんな効果があるのか分かったものじゃない、私は飲み込まないようにしていたがどんどんその量は増えていき口の中には収まらない、容量を超えたそれは私の口の端から溢れ首筋を伝う、その生ぬるさにびくりと体が強張った、フランスさんはなかなか飲み込まない私に痺れを切らしたのか顎に手を添え顔を上に向かせる強制的に嚥下を促された私は抵抗しきれずごくり、とその液を全て飲み込んでしまった、口内に入れた舌でそれを確認したフランスさんは私から顔を離す
「フランス、さ、あなた、一体何を・・・ッあ!!」
「早いね、もう効いてきたんだ?」
「あ、なに、これ、ぁ、あ!!あたま、くらくらす・・・ッ!」
「大丈夫、ただの痺れ薬だから、少しの間目を開ける位の事しか自力じゃ出来なくなるだけだよ」
何が大丈夫だ、と心の中で思ったが口にする事は出来ない脳がくわんくわんと揺れるような感じがして体の力が抜けていく確かに目は自由に動かしたり瞬きしたり出来るが他が一切ままならない、フランスさんが何か私に言っていたが意識が朦朧として私は何を言っているのか聞きとる事が出来なかった
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「おい、髭!来てやったぜ」
急に来いと言ったからにはそれなりの理由があるんだろうな、無かったら髭抜いてやると考えながら俺は髭の家のドアを殴り付けるようにノックする、数秒後ガチャリとドアノブが回ると見慣れ過ぎて飽き飽きする、あのいつものにやけた顔が出てくるのだと思っていた俺は目を見開く事になる、フランスはよく来たなイギリス、と言った、そこには何の感情も込められていない無機質なもので瞳は酷く冷たい、そして何よりも驚いたのはフランスに寄りかかるようにして身を寄せていた人物だ
「に、日本!?何でお前フランスに、そんな・・・!!」
日本はあまり他者との接触を好まない、俺だって恋人になってようやくその体に触れる事を許して貰えるようになったっていうのに何で日本はフランスにべったりくっ付いてるんだ、俺は目の前の光景が信じられなかった
「おい、日本!!っていうかフランス、日本を離せ!!何なんだよクソッ!!」
「やだなあ、イギリス見てわからないのか?こういう事だよ」
フランスは俺の目の前で日本にキスをした、それも触れるだけじゃない舌が入った深い方を、それを見て俺は一気に頭に血が上って腐れ髭野郎をブチのめそうと考えたが日本の態度を見て一気に血の気が引いた、日本は恋人である俺の目の前でフランスにキスされてるっていうのに全然抵抗せずにその行為を受け入れている、頭にガツンと鈍器で殴られた時のような衝撃が走る、嘘だろ、そんな、俺がキスする時だって日本は恥ずかしがり屋でなかなかすんなり唇に触れさせなかったというのに、フランスにはそうする事が当たり前のようにその唇を差し出している、俺は愕然とした、頭も胸も喉も全てが痛い、でも一番痛いのは心だズタズタになって引き裂かれそこは血を流しながら悲鳴を上げる
「な、分かっただろ?」
日本から口を離したフランスが得意げに笑う、俺は認めたくなくて日本に向かって叫んだ
「日本!!どういう事なんだ!?お前俺の事は遊びだったのか!?あの時くれた言葉は嘘だったのかよ!!」
何回目かの同盟記念日に俺は薔薇の花束を持ってお前に思いを告げた、今まで生きてきてこれ以上は無い位緊張していたから俺が望んでいたスマートな告白じゃなくてどもりながら最後はやけくそで叫んだそんな格好悪い告白をお前は笑って、自分も俺と同じ気持ちだと受け入れてくれた、あの優しげな瞳、柔らかな声、花がほころんだみたいな笑顔も全部、嘘だなんてそんな、だから俺は日本に嘘じゃないって否定して欲しかった、けれど日本は無表情にこっちを見詰めるだけで何も言わない、その冷めた瞳が俺の胸の傷口を掻き毟る、痛い
「日本はお前とは話したくもないってさ」
「まじ、かよ・・・本当にお前は・・・ッ!!!」
「そういう事だから、イギリス金輪際日本に慣れ慣れしく触らないでくれる?幾ら俺でも恋人に手出しされるのはたまらないからね、俺がお前に言いたかったのはそれだけ」
これ以上フランスと日本の姿を見ていられなくなって俺はフランスの家のドアを思いっきり閉めて走った、こんな時でも思い出すのは日本の笑った顔で、俺は立ち止まって振り向くと小さくなったあいつの屋敷が見えた、今頃あの中で日本とフランスは睦まじく過ごしているのだろうか、そう考えると吐き気がした、あんな風に言われてもまだ俺はお前の事・・・
「お前は遊びでも俺は本気だった、日本・・・ッ!!」
立ちつくすイギリスの姿を屋敷の大窓からフランスは見ていた、卑劣なやり方だと思ってる、でも他にどんな方法があったんだ?俺はお前に甘くていつだって大概の事は許してきた、いや許せた、でも駄目なんだ日本だけはどうしても、お前と日本が恋人になった時いつもなら他人の恋愛成就を祝って自分の事のように喜べるけれど俺にはそれが出来なかった、日本がイギリスのものになったと聞いて湧き上がって来た感情は嫉妬でその時になって初めて俺は日本の事が好きだったのだと気付いた、でも最初は二人の事を祝おうと二人の幸せを願おうと努力した、けれど駄目だった二人が笑い合う姿を見るたびに胸が押し潰されそうで心が軋んでその場で叫びだしたい程辛かった、もう表面だけ笑顔で取り繕うには俺の心は疲れ切っていた、限界だったんだ
「お前が本気だったように、俺だって本気なんだよイギリス・・・」
気に入らないのなら奪い返して見れば良い、その気になれないのならその程度だったという事だ、かつて略奪の限りを尽くした海賊様ならその位朝飯前だろう?けれど俺だって譲る気は無い、ここからは死に物狂いで望むもの全てを手にして見せる
2011.08.17
あとがき
(いつも兄ちゃんが酷い目に遭っているから今度は兄ちゃんが報われる話を書こう!!(キリッ という思いの元文字を打っていたらあろうことか兄ちゃん全然報われてない上に出てくる人物皆報われない話が出来上がりました、これは酷い、何がしたかったの?馬鹿なの?)