踊りに踊った世界会議も終わり俺は書類を整え鞄に入れ立ち上がる、帰り際少しでも話せないかと日本の姿を探したが日本は速攻アメリカに捕まっていて俺は肩を落とす、あいつと日本が一緒に居ると碌に会話する事が出来ないけれど何も話せないよりましだと思い俺は日本の方へ足を向けるとタイミング悪く髭が書類片手に俺に話し掛けてきた、プライベートの話なら蹴ってさっさと日本の元へ迎えたが髭が持っていたのは一週間後のヨーロッパ会議についての書類だったので無視する訳にはいかず俺は書類を受け取りフランスと2、3話して別れると日本とアメリカの姿は消えていた、その事にがっかりしながら俺は長時間の会議で疲れた体を休ませる為にホテルに向かう今回の世界会議の開催国はフランスだ、勝手知ったる隣国でいつも取っているホテルはあいつも勧めるだけあって煌びやかな外観や内装だけでなくサービスや接客の質も高い、俺は込み上げてくる欠伸を噛み殺しながら赤い絨毯が敷かれた廊下を歩き取っていた部屋に入る、鞄を置き上着をハンガーに掛けてネクタイを緩めた時だった、廊下の方から足音がして俺は少し驚く、この階にある部屋は全部で3室、だが部屋の内装や広さから分かるようにそこそこ値段が張るので利用する客はいつも殆どおらずいつも貸切のような状態だった、俺が記憶している中で自分の他に利用客が居た回数はゼロだ、別に貸し切りのような状態だからと言って何かはめを外したりする事も無いけれど自分の他に利用客が居ると何だか少し窮屈になったような気がした、でもまあ良い廊下で見た所俺が居る部屋を除く2室は空室のみたいだったから今廊下を歩いている客が隣の部屋になる事は無いだろう、ここの従業員は気がきく奴ばかりだし。隣の部屋に利用客が居るとテレビの音量や遅くに風呂に入る時なんかに結構気を遣うものだ、今まで利用客が居なかった所為で誰にも気兼ねせず自由に過ごしていただけに隣室の客に気を遣うのは正直面倒くさい、だが俺の考えを裏切って廊下の客はガチャリと隣室のドアを開けたようだった、何で隣の部屋なんだよ、と心の中で言った後ここの従業員への評価を改めた、そして隣室からトン、と控え目に物を置く音が聞こえてこっちに対して気遣ってくれている感じが伝わってきたので少し俺の機嫌は良くなった、これがこちらの事も弁えない奴だったら遠慮なくカウンターに電話して部屋をかえさせた所だ
(にしても結構音って聞こえるもんなんだな)
隣室からガチャリと備え付けの冷蔵庫を開ける音が聞こえて俺は思った、まあ時間も21時と遅く通りの交通量も減り全体的に静かで他の音が無いから無駄に音が響いているからかもしれないと思ってた矢先、廊下からダダダダダ・・・と誰かが駆けてくる音がして俺は眉を寄せる、随分落ち着きが無い奴だなと思っていたらそいつは隣室あたりで足を止め
「Hey日本!!遊びに来たんだぞ!!!」
と場違いに明るい声で言って俺は驚いた
(な、アメリカ!?てか日本って事は)
声からして間違いなく廊下に居るのはアメリカだ、そんな事よりも俺はアメリカが言った言葉の方に驚いていた、あいつは確かに隣室の前で日本を呼んだ、てことはつまり今、隣に居るのは、俺がそう思っていると隣室のドアが開き
「ア、アメリカさんもう少し静かにしないと隣の部屋にも人が居ますし」
「HAHAHA、Sorry!!次から気をつけるよ」
廊下から聞こえてきた耳に心地良い低音を聞いて俺のテンションは一気に上がった、うわああ、本物だ、同じホテルを取って部屋が隣通しなんてすげえ偶然、従業員よくやった!ああこんな事ならもう少し時間遅らせてホテルに来るんだった、日本とカウンターとかでばったり会って部屋が隣通しな事もすぐに分かったかもしれないのに、今すぐ隣の部屋に押し駆けたい思いを堪えて俺は一人で部屋をそわそわと歩く、理由も無しに部屋に行ったら不自然だよな、いやでも廊下で日本とアメリカの声が聞こえたから挨拶がてら来てみた、だったら不自然じゃない、か?でもそこから先の会話が思い浮かばねえしアメリカが居る今行ったらあいつに追い返されそうだ、ならあいつが帰ってから・・・いやあいつ結構長く居そうだしそれにあいつが帰ってから俺が部屋を訪ねたら日本休む暇ないしな、日本だって会議で疲れてるんだから休みたいよな、今日行くのは止めるか、じゃあ明日の朝日本がホテルのレストランで朝食とりに行く時間を見計らって俺も部屋を出て偶然を装って朝食一緒に食べよう、そうだそれが良い、考えが纏まった所で俺はソファに座り小さく鼻歌を歌いながら明日に備えて寝る準備を始める、浮かれていた自分が馬鹿らしいと後々思う事になるのも知らずに
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「ん?」
ドン、と隣室から振動が伝わり俺はテーブルにグラスを置き首を傾げる、俺の部屋と構造が全く一緒ならこの壁の向こうはベッドルームという事になる、アメリカのやつもしかして日本の部屋に泊まっていくつもりなのか?と考えていた俺は壁越しに聞こえてきた日本の声にぎょっとする
「ああ――――さん、―――良い――から!!っあ!!あ、いた、やあ、ちょ、はげし・・・ッ!!」
隣室に配慮していない音量のそれは壁を隔てているとはいえ途切れ途切れに俺は聞きとる事が出来た、それを聞いた後俺の体中からザ、と血の気が引く、日本の声も言った内容もまるで情事の時のそれだ、嘘だろ、と唐突な出来事に俺は付いて行く事が出来ずに目を白黒させる、いつも他者への配慮を忘れない日本が配慮のない声を出すという事はそれだけの状況に追い込まれているという事だ、てことはやっぱり・・・いや違う、そんな事ある筈ない俺の勘違いだ、そうに決まってる、そう思い直そうとした俺に追い打ちをかけるように隣室から声が聞こえた
「?――――優しく―――つもり――だけど、じゃあこう――?」
「っあ、――少しゆっ―り・・・」
中を見ない事にはそこで何が行われているかなんて知る事は出来ないけれどアメリカの声も日本の声もいつものものとは色が違う、甘やかすようなアメリカの声とそれに甘えるような日本の声、そんな声聞かされたら否応無しに俺にとって最悪の展開が隣室で起きているのだと思わざるを得ない、冷や汗が背筋を伝う、全身が心臓になってしまったのかと錯覚する程耳元で脈動の音が聞こえる
「――?」
「ん、あ、きもちい―です・・・」
「日本――固くなって――だぞ」
「もっと、ああ――――、そこ――」
頭がガンガン痛むのに聴覚は過敏に働いて隣室の音を拾う、下肢に響く日本の甘い声、もう確定だ、日本とアメリカか、単なる友達にしてはアメリカは日本の所に入り浸っていたし日本もアメリカをやけに甘やかしているとは思っていたがそれは二人が恋人同士だったからなんだ、な、そんな事も知らずに日本に今までずっと焦がれて、日本と喋れなかった日は沈んで、喋れた日には一人で浮かれて、喜怒哀楽をたった一人によって左右されて、俺がそうしている間日本とアメリカが互いに睦み合っていたのだとしたらそれは何て独り善がりの恋なのだろう、あの時の自分が滑稽で無様で仕方ない
「はは、は・・・馬鹿だ、俺・・・」
同盟時代からの恋だった、長すぎる間ずっと温めてきた想いをこんな形で冷まされるのなら、いっそこれまでの関係が壊れる事に臆さずに伝えていれば良かった、日本に振って貰っていたならまだここまで辛くなかったかもしれない
「本当に・・・馬鹿だ」
もっと早く日本に伝えていたら、なんてもう遅い、それに俺が想いを告げた所でいきつく先は変わらない、日本はアメリカが好きなのだから
唐突に終わりを告げられた長すぎる片想いにイギリスは一人静かに涙を流した
2011.08.17
あとがき
(と、勝手に思い込んで勝手に落ち込んでいる眉毛なのであった・・・)