Black and Black

会議が始まる30分前珍しい事にアメリカは既にその会議場に足を踏み入れていた それは至極単純な理由でもう会議室に着いて会議の準備をしているであろう日本に早く会いたかったからだ アメリカが日本と最後に会ったのは1カ月も前だ何度も会いに行きたいと思ったが生憎仕事が立て込み続けて 会うに会えず今に至る、足取り軽く会議室に続く質の良い絨毯が敷かれた廊下を歩いて行ると前方には珍しい人物が居た、 ほわほわとしたオーラを出しながらくるんを揺らして歩いているのは遅刻常連国のイタリアだった、そのイタリアを見た 途端アメリカの機嫌は急降下した、アメリカだけは彼の裏の顔を知っていたからであるそして何となくこの先の展開も読めた

「ようイタリア!君、今日は随分と早いじゃないか!」

声をかけるとイタリアはくるりとアメリカの方を向いた、アメリカを見た瞬間イタリアの周りにあったほわほわとしたオーラは 消し飛んだ

「それはこっちの台詞だよー、アメリカも随分早いんだね」

それでも至って普通にアメリカが声をかければイタリアも常のイタリアのように返事を返す

「そりゃそうさ、何だって今日は久しぶりに日本と会える日だからね!」
「じゃあ俺と目的は一緒って事だね、俺も日本に会えるのは久しぶりで早く日本に会いたかったから会議場に来たんだー」
「へえ!気が会うね俺達でも日本に先に会うのは・・・」

「俺だよ」 「俺なんだぞ!」

にこにことしながら二人は互いに懐から取り出した銃を向け合う

「君にそんな武器を持ち込まれるなんてね、全くボディチェックの奴は何をしてるんだい?今度きっちり教育しなおさないといけないね」
「俺こう見えて友達は多い方なんだー、だから今日はボディチェックはパスさせて貰ったよ」
「今度からイタリアは武器を持ち込むからチェックは厳重にしておくように言っておくよ」
「ヴェー面白い事言うね、俺が武器を持ち込む?そんな事誰が信じるの?」

ここで初めてイタリアは開眼して言ったその笑みは未だアメリカしか見た事が無いであろう嘲りの色を含んだものだった、そうそんな事を言っても誰も信じない、普段のイタリアは上手く周りを欺きヘタレでかわいらしいキャラクターを各国に刷り込んでいる、アメリカがイタリアは武器を持ち込むからチェックを厳重にと言った所で自国ならなんとかなるだろうが他国ではその言葉は信じられず寧ろ何言ってるんだアメリカあいつがそんな事する筈ないだろ、と笑い飛ばされて終わりだ、それでは意味が無い

「だから君は厄介なんだよ、もう良い加減皆の前で本性を出したらどうだい?」
「冗談言わないでよ、何のために俺がこんな事してるか分かってる癖に」
「さあね、検討もつかないよ」

くすり、と静かに笑ってイタリアは小首を傾げる

「俺、アメリカの事は嫌いじゃないけど日本の事となると話は別なんだ、ねえここは譲ってくれない?」
「君こそ面白い事を言うね答えなんて分かってるだろう?」

不敵に笑えば相手も笑う目を細めたイタリアの笑みは背筋のゾッとするようなものだった、こうなったら実力行使に出てしまおうかとアメリカが考えた時ギイ、と扉の開く音と共に合う事を待ち望んでいた人物が廊下に出てきた、そしてアメリカが日本に目を奪われている間背後の日本の気配を察知したイタリアの行動は素早かった

「ヴェー日本ーー!!助けてーー!!アメリカが俺に銃向けて来た!!」
「イタリア君!!・・・大丈夫ですよ、アメリカさんお戯れはその辺にしておいて下さい何があったか分かりませんがそんな物騒な物を向けるなんて非常識にも程があります」

腰に抱きつくイタリアを宥めるように撫で日本はいつになく真剣な表情でアメリカを咎める、そう咎められるのは自分だけなのだ、ここでイタリアだって自分に銃を向けていたと言っても誰も信じない、ああ腹が立つと思いながらも己の感情を押し殺してアメリカもいつものアメリカのように日本に話しかける

「やだなあ日本!これ本物の銃じゃないんだぞ!一昨日雑貨店に行った時本物とそっくりなモデルガンを見つけてね、ちょっと驚かそうと思ってイタズラしただけなんだぞ!!」

嘘だ、この銃はその気になれば熊だって一撃で倒せる威力を持つ正真正銘本物の銃だ、護身用にしては過剰過ぎるその威力だったが一昨日ガンショップに行った時気に入ったので購入した

「はあー何だそんな事でしたか・・・」

その言葉に納得したらしい日本は肩を落として溜息をつく

「イタリア君、聞こえましたか?アメリカさんはふざけていただけのようですしそんなに怯えなくても大丈夫ですよ」
「ヴェー、本当アメリカ?」
(嘘、それ本物の銃でしょ?)
「ああ勿論だとも!何たって俺はヒーローだからね!!」
(やっぱり分かっていたんだね、でも君だって俺に銃を向けたからお互い様だろう?)

言葉と表情には一切出さず瞳だけで二人は会話する、日本だけは二人のやりとりに気付かず、では私は少し喉が渇いたので休憩室でお茶を飲みに行って来ますね、と言いイタリア君、アメリカさんそれではまた、とぺこりとお辞儀をして去っていく、再びイタリアと二人きりになった廊下で最初に動いたのはイタリアだった、懐から銃を取り出し天井に向け引き金を引く

ポン!

間抜けな音と共に銃口から紙吹雪と一輪の薔薇の花が飛び出した

「!!」

それに目を見開くアメリカににこりと笑い掛けイタリアはCiaoと言うと共にアメリカのスーツの胸ポケットにその一輪の薔薇の花を挿して日本の後を追う、アメリカはそれを追いかけようとはしなかった、相手はこっちの銃が本物だと見抜いた上であの余裕のある態度だった、込み上げてくる敗北感が彼をその場に留まらせる

(全くあのどこがヘタレなんだか)

各国が持つイタリアのイメージと現実は余りにもかけ離れ過ぎている込み上げてくる衝動を抑えきれずアメリカは廊下で一人笑った





2011.08.17





あとがき
(イタリア男の本気を書きたくて出来た文、へたれなイタちゃんも好きですが黒いイタちゃんも好きです同じようにAKYなアメリカも好きですし黒いアメリカも好きです両方とも美味しいですよねうまうま)