In the box

どうしてこんな事になったのか俺には分からない、ただ一つ分かっているのはこのままだと俺は絶対に正気を保てなくなるという事だけだ、5日に渡る世界会議の最終日は昼までで終了との事で会議が終わってホテルに戻ろうと思った俺だったがアメリカに話したい事があると休憩室に呼ばれてそれは叶わなくなる、他の奴らなら断っていたがアメリカなら話は別だ、いつも邪険にされる事もあってか頼られた事を嬉しく思いながら俺は休憩室の前に立つ、アメリカが話したい事は一体何だ、休憩室に呼び出して話さなければならないという事はいつもの様な軽い内容じゃないんだろうなと思いながらドアを開けて部屋に一歩踏み出したその時だった、重い衝撃と共に腹のあたりに鈍い痛みが走る、殴られたのだと認識する前に意識が飛んで目覚めてみればこの状態だ、出来るなら誰かに説明して貰いたい、簡潔に言うと俺は今とても狭い空間に押し込められている、四角形に区切られた空間は何かの箱のようだ、けれど箱にしては頑丈で殴っても壊れず出口も無い、だが訳が分からない内にこんな狭い空間に押し込められている事なんて俺にとって大した問題じゃない、俺を呼び出したのはアメリカだからきっとこの状況を作り出した犯人はあいつだという事くらいは俺にも分かっている、一番厄介なのは

「イギリスさんすみません無理な体勢をさせてしまって」
「いや気にすんなよ日本」

この箱のような空間に日本も一緒に居るという事だ、場所が狭い為日本は膝を曲げ側面に背をぴったりと預けている、俺はその体の上に跨って日本の体に触れないように膝立ちになり上体を屈めて姿勢を保つ為に腕を側面、丁度日本の顔の両側に付けている、これでも俺は精一杯日本から離れているがどうあがいたって顔の距離はお互いの吐息を感じれる程近くになってしまう、密室で二人きり常に無い程近い日本との距離、日本に片思いをしている身としてはある意味美味しいが非常に辛い、欲望に任せて行動してしまえという自分とそんな事をしてはいけないと抑制する自分の板挟み状態で顔の距離を数p縮めるだけでキスが出来てしまうこの状態を俺は延々と耐え続けているこれじゃ生殺しだ、一体いつになれば俺達はこの状態から解放されるのだろう自力で脱出が困難な為必然的に俺達は外部からの助けを待つしか選択肢がない、けれどここが一体どこなのかお互い分からないからそもそも人が来るかどうかも怪しい酷く不安定な状況に眩暈さえ覚える、夏の盛りは過ぎたとは言え密閉された空間に二人居るとなると流石に蒸し暑く上着の下のシャツが肌に張り着いて気持ち悪い、出来れば衣服を緩めたい所だがこの体勢で手を離すと日本に圧し掛かってしまうからそれは出来ない

「秋とはいえ流石に暑いな・・・」
「そうですね、もう汗で色んな所がべたべたですよ」
「はは、俺もだ」

はあ、と溜息を付いた日本の吐息を間近で感じる、日本は最初こそお互いの体が密着しそうな状態に戸惑っていたが今では慣れたのかそんな素振りは見られない

「あの、すみませんイギリスさん少し服を緩めたいので動きます」
「ああ、分かった」

断ってから日本はネクタイをシュルリと解いて上着のボタンを全て外しシャツのボタンも二つ程外した、いつもきっちりと服のボタンを全て止めている日本だからその少しラフな格好に色気を感じる、あまりまじまじと見るのも変だろうから視線をずらせば汗を乗せた肌といつもは服の下に隠されていてみる事が出来ない鎖骨が視界にアップで映りじわりと嫌な汗が噴き出す、反則だこんなの、そこに齧り付きたい衝動を必死で宥めて俺は衝動を宥めるように息を吐いた

「見苦しくてすみません」
「気にすんな別に見苦しくなんてないから」

寧ろ目の毒だ、理性がぐらりと傾きそうになる位

「あ、イギリスさんの服私が緩めましょうか?この体勢で自力でするのは難しいでしょうし」
「悪い、頼む」

失礼しますと日本は俺に言って服に手をかける、ネクタイを外し上着のボタンを一つ一つ丁寧に外して行く日本の手付きを見ていると変な気分になってくる、恋人同士が情事の前に相手の衣服を脱がす行為を連想してしまった俺は必死でその不埒な妄想を打ち消す為素数を数え始める、上着のボタンを全て外し終えた日本はシャツに手を添え一番上のボタンを外す、その時日本の手が俺の肌に直に当たって急に現実に引き戻された俺はぴくりと反応してしまう、触れられた所から体に甘い痺れが走って背筋がぞくぞくする駄目だ抑えろ落ち着け、自分に言い聞かせながら俺は拳を思いきり握り爪を掌に食い込ませる痛みで衝動を誤魔化しながら何とか二つ目のボタンを日本が外して俺から手を離すまで耐え切ったが触られた事に触発されて体は火が灯ったように熱く頭がくらり、と揺れるような錯覚すら覚える

「あ、ありがとな日本」
「いえいえ、お安い御用ですよ」

礼を述べると日本は微笑んで言葉を返してくれる、その邪気の無い笑顔に邪な事を考えている自分が酷く汚れているように感じたがその罪悪感は欲望を押し留める抑止力には到底成りえ得ない、罪悪感も一瞬で忘れる程の圧倒的な欲が体の中をぐるぐると渦巻いている、だがそれでも一時の情動に流されて日本に手を出すなんて絶対に駄目だ

「・・・リスさ・・イギリスさん!!」

日本に呼ばれている事に気付いた俺は顔を上げる、日本はとても心配そうに俺を見詰めているその瞳には今俺しか映っていない視界を独占しているのが自分だという事実にずくり、と胸の奥が疼いた

「あ、悪い、日本・・・何だ?」
「いえお気になさらず、それより大丈夫ですか?さっきからずっと辛そうな表情をされていたので気になって」

心情がそのまま顔に出てしまっていたらしい、そんな事よりも本当はもう喋らないで欲しい吐息が顔をくすぐる度に疼きが酷くなる、心情と同じく腕で上体を支えるのもそろそろ限界だ、何分この体勢でいたか分からないがずっと同じ姿で留まり続けるのは思いの外難しい、汗で滑るそこが更に留まり難さに拍車をかけている

「日本、ごめ、そろそろ腕が・・・」

最後まで言い終わらないうちにずるり、と滑った腕の所為で俺は日本の体の上に倒れ込んでしまう日本の上半身と俺の上半身はぴったりと密着していて日本の熱が自分にまで伝わってくる、急に上に俺が倒れ込んで来た所為で壁に背を打ち付けてしまったのか日本からは控え目に息を詰めるような音が漏れる、毒のように色気を含んだその声を間近で聞いて俺の理性が瓦解する、誘われるように目の前にある唇に口付ければびくりと日本は震えて目を見開く、その反応が更に俺を煽る事になるとも知らずに、薄く開いた口から舌を入れて熱い口内を舐め回す、行動一つ一つに反応して俺の下で跳ねる体がたまらない腰が痺れて頭がくらくらする、とろけた思考では歯止めが効かない俺は躊躇いも無く日本のシャツの中に手を入れ脇腹をなぞったまさにその時だった

「HAHAHAー!!おーい二人ともびっくりしたかい?ドッキリ大成功なんだ、ぞ・・・」

殴っても壊れなかった箱の上面がいとも簡単にぱかりと開き上から場違いにアメリカの明るい声が降って来る、だがそれも箱の中の俺達の様子を見るなり徐々に勢いが無くなってしまう、それもそうだ唇は離したとは言えお互い衣服を肌蹴た状態で密着して俺は日本の服の中に手を入れている、どう見たって俺が日本を襲っているようにしか見えない、事実襲っていたのだからその通りだが、急速に先程までの熱が冷めていくのを感じて俺は青くなる、手を、出してしまった日本に、俺は、キスして、舌も

「う、うわああああ!!!ごめん日本!!」

慌てて日本の上から飛び退いたイギリスを見てアメリカは呆れたように溜息をついた、イギリスは知らない、日本がイギリスに想いを寄せていてアメリカに相談していた事も、アメリカが両方片想いという状態の二人を見て距離を縮める為にと日本と考えてドッキリを仕掛けた事も、ただ二人の状態から察するに自分のした事は意味があったのだとアメリカは内心呆れつつ一人笑う、全く手のかかる親友と兄だと想いながらも二人の恋の成就を願う、顔を赤くした島国の様子から見るに彼のその願いが果たされる日も案外遠くは無さそうだった





2011.09.14





あとがき
(落ち着いているように見える日本ですがその裏側では焦りに焦ってるんだと思います、顔に出さないのはきっと年の功とかのお陰です)