本気までのカウントダウン


「菊ー!菊ー!来たよー!」
「フェリシアーノ君いらっしゃい」
「きゃわん!」
「ヴェーポチくんもCiao!Ciao!」

フェリシアーノ君はただ私の家に遊びに来たわけではない、あれは先週の事だった 会議が終わり帰り仕度をしていたら目を開けていつもよりも真剣な表情の フェリシアーノ君に私に相談したい事があると言われたのがきっかけだ、生憎 その日から6日間は仕事が詰まっていたから少し間が空いてしまって申し訳ない と思いつつも今日フェリシアーノ君のその相談を聞く事にした、場所はどこにするかと尋ねれば、俺が頼んだんだし日本の家に俺が行くね、とそれまでの真剣な表情を崩してふわりとフェリシアーノ君は笑った、いつも笑顔を絶やさず言っては悪いが悩み事なんて一見してなさそうな彼が真剣な表情をして相談、だなんて何事だろうかと私は少々困惑してしまった、 客間に案内してお茶と和菓子を出すと途端にフェリシアーノ君の顔が明るくなる

「ヴェ!俺日本茶も和菓子も大好き!今日の和菓子もすっごく綺麗で何か食べるのが勿体ないよー」
「フェリシアーノ君にそこまで言って頂けるなんて、これは作った甲斐がありましたね」
「ええ!?これ菊の手作りなんだーすごいね!!ん、おいしい!!」

そう言って私の作った菓子を美味しそうに食べるフェリシアーノ君を見ていると 心が和んだ、丁度自分に孫が居ればこんな感じなのでしょうね、と爺染みた事 を思いながら一人くすりと笑った





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その後私もお茶を飲みつつフェリシアーノ君としばらく世間話をして 本題に入るどんな事を相談されるのだろうかと身構えていた私だったが 内容はフェリシアーノ君の意中の相手について、つまり恋愛相談だった 、その事に少しほっとしつつも恋愛相談なら私なんかではなくフランシスさん に頼んだ方が良いのではないかと思ったけれどフェリシアーノ君にも何か理由が あるのだろうと深く考えず自分の思った事は心の中にしまっておいた

「それでフェリシアーノ君は何を悩んでいるのですか?」
「今俺が好きな人、俺よりも結構年上で俺の事こども扱いでちゃんと俺の事見てくれないんだー」
「おや、それは困りましたね」
「うん、結構俺頑張ってアプローチしてるんだけど全部空回りだし、寧ろそのアプローチでますますこども扱いに拍車がかかっちゃったみたいなんだよね」

フェリシアーノ君はヴェーと言って肩を落とす、いつもはくるりと丸まっているくるんが今はへにょりとしおれている私はフェリシアーノ君の肩に手を置き安心させるようににこりと笑う

「きっとフェリシアーノ君なら大丈夫ですよ、ですがアプローチの仕方はもしかすると変えた方が良いかもしれませんね、これまでの接し方で駄目ならもっと違った接し方にしてみてはどうです?」
「違った接し方かー!!やっぱり菊もそう思うよね!!」
「え、ええ、思います」

私の言葉に目をきらきらさせてフェリシアーノ君は拳を握って力強く言った

「菊にアドバイス貰ったし俺頑張っちゃうよー、絶対絶対振りむいてもらうんだ!」
「はい、私も応援していますよ」
「ありがとー菊」

がばり、と抱きつかれて頬擦りされる彼からのスキンシップにももう慣れたもので 私は私の肩にのっているフェリシアーノ君の頭を優しく撫でた彼は気持ちよさそうにヴェーと言った

「ねえ菊」
「何ですか?フェリシアーノ君」
「菊から見た俺ってどんな風に見えてるの?」
「ふふ、いきなりどうしたんですか?」

抱きしめた体勢のまま私の肩にふごふごと顔を押し付けながらフェリシアーノ君は言った、きっと甘えているのですね、とその時私は呑気に考えていた、この先の事を知っていれば絶対言わなかったであろう言葉を私は何の躊躇いも無しに彼に言う

「そうですね、私からすればフェリシアーノ君は孫みたいに可愛らしく見えますよ」

その言葉を私が発した時フェリシアーノ君の体がぴくりと反応する

「そっか、やっぱりそうだよね」

私の肩に頭を置いている為表情は確認出来ないがそのいつもよりも低く妙に 落ち着いた声に私は驚く

「ッ!!」
「早速菊のアドバイス実践してみる事にするね、俺」

言うや否やフェリシアーノ君は体に体重をかけ私を床にドサリ、と押し倒す、 床に体がつく寸前フェリシアーノ君が手を添えてくれたお陰で痛みは無いが 私の頭は疑問符でいっぱいになる、状況に頭が追いつかない、どうして何でこうなった、私の腹の上に乗ったフェリシアーノ君は今まで見た事の無い酷く色っぽい笑みを浮かべて私を見降ろしている

「びっくりしてるね菊、それもそっか今まで俺の事孫としか見てこなかったんだもんね」

するり、とフェリシアーノ君は私の頬を撫でて言った、その動作だけで私の体にぞくり、と得体のしれない何かが走る、フェリシアーノ君は私の額に彼の額を合わせる、息がかかりそうな程近い距離に彼の顔、今までこんなにも彼に近づかれて緊張した事があっただろうか、彼はいつだってヘタレでかわいらしくて無邪気だったでも今の彼は何だか冷静で妙に色っぽい

「菊の隣で俺がずっとこういう事菊にしたいと思ってるなんて夢にも思わなかったでしょ?」
「フェ、フェリシアーノ君・・・」
「俺、これでもずっと我慢してたんだよ?菊ってかわいいものが好きって知ってたからかわいくあるよう努力したし、スキンシップが苦手だって分かってたから徐々に慣れて貰えるように自分を抑えてハグだってキスだってしてた、でもそれで俺の気持ちに気付いて貰えないなら意味無いんじゃないかって俺、思ったんだ」

彼の手が私の体のラインを確かめるように脇腹を滑る、弱い部分を触られて体がビクリと跳ねるとフェリシアーノ君は更に笑みを深くした

「そろそろ本気出しても良いよね」





2011.08.17





あとがき
(孫扱いに不満爆発した伊の話でした、黒伊書くの楽しすぎるぜー)