「イギリスさん、客間に布団敷いておきましたから」
何度となく訪れた為もうアメリカ対策に隠された銘菓の位置も把握してしまった勝手知ったる日本の家にイギリスは今日も厄介になっていた、昼間は二人で買い物に出掛け気の赴くままに欲しかった服や料理が美味しいと評判の店で食事をして夕飯の材料を買って家に帰って来たのは夕方だった、その後イギリスはぽちの散歩に日本は夕飯を作り、たわいない話をした後別々に風呂に入り現在に至る、イギリスは風呂から上がったばかりでまだ若干水気の残った髪をがしがしとタオルで拭きながら切子グラスに注いだ水を飲み干し日本の言葉に首を傾げた
「ん?何でだよ一緒に寝ようぜ」
イギリスが疑問に思うのも仕方が無い事だった、二人は最近付き合いを始めたからである、今までは友人という関係だったから客間に布団も理解出来たが晴れて恋人同士になれたというのに態々客間に布団を敷いて別々に寝るのは違和感がある、イギリスの問い掛けに日本はちょいちょいと指を動かし応える、イギリスを自分の傍に来させると日本は畳の上に座り向い合う形でイギリスもちょこんと正座をしてそこへ座った、未だに自分の考えを理解せずきょとんとした様子のイギリスを見て日本は小さく溜息をついてイギリスを見詰めた
「・・・普段から爺だと自ら幾度となく言ってはいますが、爺とは言え私も男なんです」
「いや、別に俺日本の事女性だと思ってないぞ?」
アジアの男性は欧米から見れば中性的に見え日本だって最初見た時は一瞬性別が分からなかったがそれも昔の話だ彼の性別が男だと言う事はそれこそ言われるまでも無い、何故今になってその話を持ち出すのか分からずイギリスはますます混乱した
「いえ、そうではなく恋人同士で共寝を促されたともなれば男は馬鹿な生き物ですからお誘いだと勘違いしてしまうという事です」
「な!あ、いや、えと、そうじゃなくて、だな・・・その・・・」
途端イギリスは赤面ししどろもどろになり声は酷く上擦っている、まさか日本からこのような事を言われるなんて思っていなかった、想いが通じあっても身体は繋げていない今の状態だがイギリスは充分満たされていたしその先に進むのはまだ当分後の事だと思っていた、そう言えば今日は付き合い始めてから初めて日本の家に泊まる恋人同士で初めての泊まりともなれば本来ならそういった事になっても全然おかしくない、イギリス自身はそこを意識せず未だ抜けて無かったらしい友人感覚で泊まり来てしまっていたので迂闊だったと内心焦る、けれど日本はそんなイギリスを見抜いていた、キスすれば未だに恥ずかしがるくせに泊まりたいと言われた時は正直驚いたがその瞳からは純粋に自分の家に宿泊したいのだという思いしか伝わって来ずに日本は人知れず鈍感な恋人に苦笑いをしたものだ
「なら貴方と床を共には出来ません」
「な、何でだよ!じゃあ日本はお誘い以外じゃ俺とは寝ないっていうのか!?」
確かに意識をしてなかった自分が悪いがその気じゃなければ一緒に寝れないというのは酷くは無いだろうか、そんなのまるで身体だけ欲しいみたいじゃねえかとイギリスは内心毒を吐く
「いや、寝ないのはではなく寝れないんです」
「へ・・・?」
「だってそうなってしまったら私多分我慢できません」
「え・・・」
「まあ間違いなく手を出してしまうでしょうね」
「あ、うあ・・・!」
平然と放たれた日本の言葉についにイギリスは顔をこれ以上ない位赤くして涙目になってしまう、日本はイギリスを思って一緒に寝ないと言ってくれていた、それを自分は勘違いしてしまって申し訳ないと思うと同時にそこまで求められていた事を嬉しく思いつつも羞恥心で顔が熱くなる
「それでも構わないというのなら・・「お、俺が、悪かった、一緒に寝るのはまた今度でオネガイシマス」
耳まで真っ赤に染めて決まり悪そうに視線を逸らすイギリスを見て日本は少し言い過ぎましたかね、と心中で呟きくすりと笑った、それでも本心なのだから仕方ないと言い訳しつつイギリスに向かって安心させるように微笑みかける
「分かって下さったなら何よりです」
言い終わると日本は自室に戻ろうと立ち上がりイギリスに背を向けるがふと何かを思い出したらしく立ち止まりちらりとイギリスを見遣る
「あ、でも一緒に寝る覚悟が出来たなら遠慮なく言って下さいね」
待ってますから、と言い残し足音を立てず日本は部屋を出て行く、日本の表情は今までイギリスに向けて来たものとは違い壮絶な色香を放っていて、唐突に放たれたそれにあてられたイギリスはくらくらする頭に手をあて苦し紛れに呟いた
「のぼせそうだ・・・」
何にかは言うまでも無いだろう
2010.09.24
あとがき
(決して気取られないように普段は努めて涼やかな顔や態度をとっている裏側では曝け出せば相手が戸惑う位その相手を求めている祖国のお話でした)