戦い始めてもうどれ位時間が経ったのだろうか体の疲労感からかなり長い間戦闘している事は分かるが
時間の感覚は最早麻痺して分からない、だがどこにそんな数が潜んでいるのか見当もつかないが切っても切っても敵は次々に湧いて出てくる、
この敵が実に厄介で見た目は人のような姿をしているのに体は腐敗していて幾ら私がそこに切り込もうと大して効果はない
時々その体内からは黒い触手が飛び出しこちらに毒針を打ち込んで来る、接近戦で戦う私は何度も毒針を打ちこまれかけてなかなか苦戦を強いられた
だがそんな敵にも弱点はあるらしく頭を切り離すなり潰すなりしてしまえば断末魔をあげ二度と動かなくなる
はあ、と私は大きく息を吐く、そろそろ息があがってきた体のあちこちが悲鳴を上げているけれど今回ばかりは構ってやる暇は無い、こうしている間にもまた敵は増えていく、この延々と続く鼬ごっこに正直心の中には焦りや苛立ちが生まれてきているがここで諦める訳にはいかない、ちらりと私は己の獲物を見遣る、ほこり一つ付かないように手入れしていた愛刀は既に敵の体液まみれだが流石名工が作った物だけあって刃毀れはしていない、まだ戦える。そう再び自分を奮い立たせた時だった、敵の群の再奥に私は絶望を見た
それはビルの5階に相当するような高さを持つ巨大な黒い触手の塊だ、敵の体内から出てきた触手とは太さや長さが桁違いだあの触手を叩きつけられたら私達なんて豆腐のように簡単に潰れるだろうしそれで締めあげられても一溜まりも無いだろう見た所どうやらあれが敵の親玉のようだ、漸くこの戦局に動きが見えたがこれは不味い正直今の自分の体力で敵と交戦しながらあの親玉を倒すのは難しい、隣で敵の首を跳ね飛ばしたギルベルト君も親玉に気付いたらしく動きを止めた
「ハッ!!とうとうお出ましか待ちくたびれたぜ」
彼の軍刀も敵の体液まみれで軍服は敵の攻撃を受けた為私と同様所々裂けている、だが彼は親玉を見るなり顔色を変えず口元を歪め笑う、血よりも濃い紅い瞳が好戦的にギラギラと輝いているそこには恐れや怯えといった感情は一切無く寧ろこの状況を酷く楽しんでいるような色があった、彼は躊躇いも無く真っ直ぐ親玉目指し敵の群に飛び込んでいく
「駄目ですギルベルト君!!」
正直今の自分達の状態を考えればここは正攻法で攻めても勝ち目は少ない、だが彼はそんな私に不敵な笑みを見せ言った
「駄目かどうかは俺が決める、まだチェックメイトには早ぇえよ」
膨大な数の敵に囲まれているのにも関わらずギルベルトは全くひるみもせず走る、途中向かってくる敵は早々に切り捨て親玉の元を目指す、だがギルベルトは前方の敵と切り結んでいる際後ろで己に向かって斧を振り上げる敵には気付いていなかった、その斧が無情にもギルベルトの背目掛けて振り下ろされそうになった時刹那にその敵の首が跳ね跳ぶ
「背後が隙だらけですよ」
いつの間にそこへ移動していたのか菊はギルベルトの背後で先程敵を屠った刀に付着した体液を払う
「お前の為に空けて置いてやったんだよ」
「おや、それは・・・」
自分の事を信頼していると言外に言ったギルベルトに対し菊は首を傾げ花が咲くようにふわりと笑う
「恐悦至極に存じます」
場違いに優しい風がその黒髪を揺らした、菊のその表情にギルベルトも滅多に見せない優しげな表情で応える、だがすぐに二人は表情を引き締めまだ自分達からは遠く、だが必ず倒さなければならない相手の方を見遣る
「行くぞ菊!」
「承知」
一人は激しく、一人は静かに大地を蹴った
2011.08.17
あとがき
(戦っている二人が書きたくて出来た文でした、ちなみにここで出てくる敵は若干アレンジを加えていますがバ/イ/オ/5の敵を参考にしています)