※ホラーゲーム零―紅/い/蝶―のパロ小話です
配役は澪→アルフレッド、繭(小さい頃澪と入った山道で滑り落ち右足負傷、後遺症から速く走る事が出来ない)→マシューになります、細かい所が色々違うと思いますがスル―して下さると助かります










『マシュー!!マシュー!!』

あの時の事を僕は今も鮮明に覚えている
僕とアルフレッドは生まれる前からずっと一緒だった、どこに行くのも、何をするのもアルフレッドと二人、それは生まれてからずっとそうだった、お互いが視線の先に居る事は空気を吸って呼吸をする位当たり前だったから僕はあの時までは信じて疑わなかった、これからもずっとアルフレッドと二人で穏やかに時を過ごしていく事を
歪みが生じたのは小学4年の時だった、僕と彼は当たり前のように同じ学校の同じクラスに進みいつも通りの日々を過ごしていた、小学4年生からは学校でクラブ活動が始まる、クラブ活動は必須で必ずどこかのクラブに所属しなければいけない僕はアルフレッドと同じ所に入ろうと彼にどこへ入るのかと尋ねれば彼はいつもの快活な笑みでこう答えた

「もちろんバスケ部さ!!マシューはどこにするんだい?君は料理するのが好きだし料理部か何かだろ!作ったもの後で俺に分けてくれよ!!」

その瞬間僕は彼の言葉に失意を感じた、僕は彼と同じようにする事が当たり前だと思っていたし彼と一緒に居たいと思っていた、でもアルフレッドはそうじゃない彼は俺と別々の事をするのは当たり前だと感じ別に僕と一緒に居なくても構わないと感じている、酷い食い違いに僕は碌にアルフレッドに返事をせずに走った、辿り着いた屋上で風に吹かれながら僕はずっと彼の言葉を反芻していた、その度に胸の奥がずくりと痛む、嫌だ、僕はアルフレッドから離れたくない、屋上からは運動場で楽しそうにバスケットボールをするアルフレッドと彼の友達が見えた、そう彼は友達が多い、姿形はそっくりなのに中身は全くと言っていい程似ていない、臆病で引っ込み思案な僕に対してアルフレッドは大胆で何に対しても積極的だ、そんな彼の周りには自然に人が集まり今ではその友達達と過ごす時間が多くなってきている、もしかしてこのまま行くとアルフレッドと僕は一緒に過ごす事も儘ならなくなるんじゃないだろうか、今でさえ少なくなってしまったお互い時を共有する時間、このままどんどん年月を重ねて僕達は中学に進学して高校に行って大学で過ごして一人立ちして、一人・・・そうか一人だ、僕達は一緒には居られない、最終的には遅かれ速かれ一人になる、互いの存在を見る事もないまま季節が過ぎて行くのも当たり前になってしまう、そもそも僕と彼は同じ中学に行くのかすら分からない、だって彼は平気なんだ僕はこんなに苦しいのに、ああだめだ頭が痛い、苦しい、息が、つまる、当たり前だったんだ空気を吸うみたいにでもそれがなくなってしまう、空気が吸えない、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!僕は・・・アルフレッドと離れるのは嫌だ
考えれば考える程首が絞まる感覚がして呼吸が出来ない、限界が来て僕は考えるのを止めると一気に新鮮な空気がひゅう、と体の中に入って来た肩で息をしながら僕は屋上のフェンスをぎりり、と握り締める、そこからは相変わらず楽しそうなアルフレッドの姿が見えた





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それから何か月か過ぎた夏休み僕とアルフレッドは田舎にある親戚の家に遊びに来ていた、1学期は恐れていた通りアルフレッドと過ごす時間がとても少なくなったから漸く訪れた彼と二人で過ごせる時間に僕は内心とても喜んでいた、親戚には僕達を本当の弟のように可愛がってくれるフランシスさんやアーサーさんも来ていて僕たちは二人に挨拶した後アルフレッドが急に山に行きたいと言い出したのでそれに付いていく事にした

山の中は昼間なのにひんやりと冷たい空気が流れうす暗いそんな不気味さが漂う所がさらにアルフレッドの好奇心を刺激したらしく彼は鼻歌まじりにどんどん奥へ進んでいく、元々体力が無い僕は少し息を切らしながら遅れつつも彼の後を追った、そんな時アルフレッドがくるりとこちらを向いて口を開く
「マシュー遅いよ!」
「ご、ごめん、アルフレッド」
「もうこれだから君と一緒は困るよ」
「え・・・」
「君のペースで行ってたら日が暮れちゃうじゃないか!俺はもっと奥まで探検したいのにさ」

頬を膨らませ拗ねたようにアルフレッドは言った、こどもはどこまでも無垢で残酷だ、己の事を真っ先に考え他の事など二の次だ、彼の言葉はこれまでの日々で不安定になっていた僕の心を抉り取った、一緒は困る、僕の頭ではこの言葉で埋め尽くされる、彼は僕と一緒に居なくても構わない、寧ろ僕と一緒に居る方が「困る」、困るんだアルフレッドは、まただ、また空気が吸えない、呼吸が、出来ない、苦しい・・・どうして僕達は一緒に居られないのかな、ねえアルフレッド、どうやったら僕と君は一緒に・・・

「マシュー?君どうし」

アルフレッドの空色の瞳に映ったマシューはぐらりと傾きそのまま脇にある崖の下へと転落した、崖と言ってもそれは途中で突きだした足場があり実際マシューが落下した高さは3メートル程だったが幼いアルフレッドにはそれが谷底のように深くに見えた

「どうしよう、マシューが!!マシューが!!」

慌てふためくアルフレッドの声を僕はぼんやりと意識の中で聞いていた

「マシュー!!マシュー!!」

泣き叫ぶようなアルフレッドの声を聞いて僕の意識は完全に闇に沈んだ





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僕が目覚めたのは病院のベッドの上だった、目を開いた瞬間飛び込んできたのはアルフレッドで僕は無性に安心した、彼は目を覚ます僕を瞳に映した瞬間 涙をぼろぼろと零しわあわあ泣きながら僕を抱きしめてきた

「ごめ、ん!!マシュー、ごめ、なさ!!!」

両親から聞いた話によるとあれからアルフレッドは俺を助けようと思考錯誤したようだったが全くうまく行かず親戚の家まで走り助けを呼んだらしい、そして駆けつけたアーサーさんやフランシスさん両親のおかげで僕は崖から助けだされたが意識が無い、慌てて救急車を呼び病院に入院する事になったが以前意識は戻らないそうして3日目ようやく目を覚ましたらしい、そして両親は苦しげな表情で僕に告げた、僕は崖から落ちた時足を酷く打ってしまいその後遺症でもう以前のよう走ったり急な運動をする事は出来なくなってしまったのだと、それを聞いた途端アルフレッドがまた泣きだす、俺が、俺が助けを呼ぶのが遅かったから、ごめん、マシュー、ごめん、ごめんと彼は自責の念にかられてずっと僕に謝り続けた、僕はこれっぽっちも彼の所為だと思っていないけれど彼は違ったらしい、それからだ、アルフレッドは走れない僕を何かと気にかけ殆どの時間を僕と過ごすようになった、彼は僕の行く所には必ずついて来て足の遅い僕をフォローしてくれる、それは彼なりの償いのつもりなのかもしれない、彼の人よりも強い正義感に僕は心の底から感謝した、この怪我のおかげでまたアルフレッドと一緒に居れるようになったからだ、その事に無上のよろこびを感じて僕はくすりと笑った










あとがき
(へたれな方の兄弟と迷いましたが北米兄弟で、普段穏やかな人に限ってぶちキレたりだとか病んだりすると手がつけられなくなりそうですよね)