※ホラーゲーム零―刺/青/の/聲―のパロ小話です
配役は怜→菊、優雨(故人)→朝になります、細かい所が色々違うと思いますがスル―して下さると助かります
この冷たい世界に貴方が居る、それだけで私はどんな事にも耐えてこられた、思わず目を覆いたくなる程凄惨な光景も目をそらさずに、身体を蝕む刻印には目をそらして、どうしても私は貴方に会いたかった、本来なら交わらぬ平行線、死者と生者の線引きを越えてあなたの影をずっと追い続けるけれど私が見る事が叶ったのは貴方の背中だけ、それがとてももどかしい、慌てて駆け寄ってもまるで陽炎のようにふわりと消えてしまう、あと少しの距離が縮まらない、近くて遠い
悲しみに捕らわれていた少女を解放し彼女の想い人とともに船に乗せ海に流した後、私はただ呆然と海を眺めていた、海に流れる人の想いを乗せた灯蝋がまるで蛍のようにゆるやかな海流に身を任せ流れて行く、海はどこまでも穏やかで静かだ、ふと横を見ると無数の人影がゆっくりとした歩調で海の上を歩いていくのが見えた、もしかしてアーサーさんもという思いで私は走ってその人影の元へ移動する、無数の人の中に埋もれていても彼はすぐにわかった間違えようもない焦がれ続けたあの人が私の前に居る
「アーサーさん!!アーサーさん!!」
バシャバシャと水を掻きわけながら私は必死で走るけれども水の抵抗は思ったより激しくて望む様に身体が進まない、目の前にアーサーさんが居るのにまた、私は、彼は歩いているだけなのに彼との距離が縮まない、遂に体力が尽きて私は水音をたてその場に座り込む、荒い息を吐き出しながら今の今まで泣きたいことは数多くあれど一滴も零さなかった涙が頬を伝う、少しして息を整え終わると私は絶望して顔を上げた、そこにはアーサーさんの姿はなくただ無数の人の影が延々と見える光景・・・の筈だった
「アーサー、さん・・・?」
私の目の前には追いつけなかった筈のアーサーさんの姿があった、アーサーさんは私の目の前で立ち止まり座り込む私をじっと見詰めていた、彼は待っていてくれたのだ
「アーサーさん!!アーサーッさ!!」
私は立ち上がりたまらずに彼の胸の中へと飛び込んだ、アーサーさんはそっと私の背中に手をまわす、その生前と全く変わらない優しさに一気に涙腺が崩壊した
「あーさッ!ひっ、う、ぁああ!!あ゛ー、さーさん゛ン!!!」
会いたかった、触れたかった彼が目の前に居る伝えたい事がたくさん本当にたくさんあるのに一言だって言えずに私はただ彼の胸で嗚咽を上げる
「わ、たし!あいたかっ、た!!どして、も!!あな、たに!!!」
言葉を紡ぐ度に体中に刻印が広がっていくのが分かる、でももう今はそんな事どうだって良い彼と一緒に居られるのなら、現世になんて未練は無い、アーサーさんはそんな私の背をあやすように撫でる、その仕草にまた私の瞳がらどっと雫が溢れだす
「どう、か、わたしもッ!いっしょに!!」
刻印は遂に首元まで達したこのまま呪いに飲まれて私がここの人達のようになるのも時間の問題だろう、それでも・・・、私は縋りつくようにアーサーさんのシャツを握った、その時だった、アーサーさんは私の頬に手を添え上を向かせるとふわりと笑みを浮かべた
「ありがとう」
久しぶりに聞いた懐かしい声だ、紛れもない彼の
「お前の想いは分かってる、分かってるよ・・・」
さら、と指先が私の髪を撫で離れて行く、その指先が酷く名残惜しい
「でも、俺はもういかないと」
「え・・・!?」
彼は両手を私の肩に置くとほんの少し苦しそうに息を詰めた、すると私の体に浮き上がっていた刻印が彼の手を通して彼の体に吸い込まれていく、
私の体から綺麗に刻印が消えた代わりに彼の体には刻印が青白く浮かび上がっている
「お前が死んでしまうと俺は本当に消えてしまう」
微笑みながら酷く静かにアーサーさんは言う
「お前が生きている限り俺の想いもお前と共に生き続ける」
アーサーさんは私から体を離すと私の目元を拭って最後に一際強く笑った
「だから、お前には生きてほしい」
ゆっくりと彼は後ろを向き海の上を進んでいく、私はその場から動けずにただひたすら彼の名前を呼んだ、喉が裂けても声が嗄れても構わない
、言葉にならない想いを彼の名前にのせて、呼ぶ、彼の姿が見えなくなったその瞬間、私は起きた、いつもの部屋、いつものベッドの上で外はもう朝なのか窓からは眩しい程の太陽の光が差し込んでいる
「アーサーさん・・・」
夜の闇を浚った朝、まるで彼の様だと私は目を細める、まるで夢の様な邂逅だったが彼と私が確かに出会った証がここにある、私自身が証明出来る、体にあった禍々しい刻印は消え去り、私はこうして生きている、それが彼と私を唯一繋ぐ証、私が生きている限り彼の想いも生きるというのなら私はここで生きて行こう、そう彼が望んでくれたように、まっさらで無垢な光は私に降り注ぐ祝福のようなそれを受けながら私はまた一つ息をした
あとがき
(零パロ滾ると思い殴り書いた話でした)