藪蛇のイギリス視点です読まれていない方はこちらからどうぞ
とある街の一角にあるパブ、今回の世界会議は自国だ、だから打ち上げも必然的に俺の家で行われる事になる、打ち上げのパブを選ぶ時無意識に日本酒や日本料理が置いてあるパブを選んでしまう自分はどうやらもう重症らしい、その事に一人静かに自嘲しながらからん、と氷が揺れるグラスを持ち上げ琥珀色の液体を口内へと流し込む、じんわりと広がる馴染みの味を舌で転がしながら俺はふと隣に視線を移す、これでもう何回目だろう、意識して自制しないといつも目で日本を追ってしまう、日本を好きになったのは一体いつだろう、それは同盟を組む事を誓ったあの夜だったかもしれないし、同盟時代にいつもポーカーフェイスなそれが崩れて心からの笑顔を見れた時だったかもしれないし、戦場で獲物を交えた時だったかもしれない、とにかく記憶が曖昧になってしまう位前から俺は日本に焦がれていた、けれど俺はこの想いを日本に告げるつもりはない、相手の瞳を見れば分かるそこにあるのは友愛だ恋情ではない、友達だと思っている相手にそんな風に想われている事を告げられた所で日本が困るだけだ、最悪気持ち悪がられていつものように笑いかけてくれないかもしれない、話すらしてくれないかもしれない、そう考えると今の状態が安定していて居心地が良いものに感じてくる、それをわざわざ自分から壊すような事は、しない、けれど日本の笑顔を見るとどうしても胸が甘く締め付けられる、だから秘かに想い慕う事だけは許して欲しい、迷惑は多分かけないから
普段は酒の席であってもあまり羽目を外して飲む事のない日本が今日はやけに酒類を摂取するスピードが速い、けれどやはり自国の酒には耐性があるのか積み上げられた杯に対して日本は頬が若干赤く染まっただけに落ち着いている、精々ほろ酔い位だろう、いつもは礼儀正しく涼しげに酒を呷る日本が今日は机に肘をついて気だるそうに酒を飲んでいる、その仕草や姿は普段とのギャップも影響して妙に色気があって俺には多少いや大分目の毒だ、込み上げてくるよこしまな思いを紛らわせる為俺はまた手に持ったグラスを呷った、日本が隣に居るかららしくもなく少し緊張してしまっていつものように許容量を超えた飲酒をする気にはなれない、それに飲んで我を忘れて自分の気持ちを吐露したりしたら最悪だ、それだけはお互いの為に絶対避けなければならない、そう考えていた時だった、隣の日本がことり、と静かに机の上に杯を置く、がやがやとうるさい酒宴の席でもその音は何故かやけに大きく耳についた、隣から日本の視線を感じて俺は高鳴る心臓を落ち着かせる為にまたこくりとウィスキーを飲む、それを胃に流し込んだ後日本が俺の名前を呼んだ、いつもとは違う甘い声それだけでぞくりとしたものが背筋に走る、次の瞬間ダメ押しの様に肩に日本の頭を置かれて俺は予期せぬ日本からの接触に情けない程体を震わせてしまう、どうして何で、外国のやたらとスキンシップを取る文化に不慣れで挨拶のハグですら苦手な日本が自分からなんて、内心俺は物凄く動揺していたがそれを表に出すと過剰に意識している事がばれてしまう俺は動揺を表には極力出さないようにして言葉を紡いだ、日本の目に普段通りの俺が映っている事を願いながら、日本は俺の言葉をぼんやりとした様子で聞いている、これは相当酔っているに違いないだとすればさっきの行動にも説明が付く、酒に酔って顔が赤くなる奴もいれば相当酔っていても顔色はあまり変わらない奴だっている、日本は後者なのだろう、あれ程飲んで酔わない訳がない、どうやらほろ酔いどころじゃなかったみたいだ、どうしたものかと思案しようとした時底抜けに明るく日本は
「すきあり!はぐー」
とまるでイタリア化した時のような人懐っこさで俺を正面から抱きしめて肩に額をぐりぐりと押しつけてきた、どくり、体が脈打つ、こんな風に長年想い続けた人に触れられて平気な男が居るのなら是非見てみたい、触れなくても見ているだけで良い、と何度も自分に言い聞かせてきたのにたったこれだけの事で触れたくて触れたくてたまらなくなる、思わず抱きしめ返そうと動く腕をなんとか押し留めて俺は日本に奪われたグラスを取り戻し机の上に置く、酔ってるとはいえ性質が悪い、試されているような気分になりながら俺はとろけるような笑顔を見せ俺の名前を呼ぶ日本にたまらなくなって、数回頭を撫でた、これなら別に不自然じゃないよな、と自分に言い聞かせながら、それからの日本の行動に翻弄され理性がぐらりと揺れそうになるのを必死に抑えて俺は酔っ払った日本をホテルへと連れて行く事になった、フランスから、送り狼になるなよ、という下衆な言葉が飛んできて俺は内心どきりとした、自分だってそうなりそうで実際怖いと思っていただけに図星をこんな酔っ払いに突かれた事が屈辱でいつもより2、3発多くフランスを殴ってパブを後にする、そんな事は絶対にしないと無防備に俺に体を預ける日本を見て固く誓いながら
ホテルの部屋の前に着き、これ以上は色々な意味で中に入ると不味いと思い日本に後は自分で出来るか?と尋ねたけれど日本からの答えは俺のスーツの裾を掴むだけだった、その仕草に胸が苦しくなりながら俺は部屋の鍵を開け日本が使う寝室へと足を運ぶ、寝室に日本と二人きりという状況は心臓に悪い、ベッドに腰掛け頬を酒の所為で赤くした日本を見た時思わずベッドに押し倒して強引に唇を奪い服を脱がせたその先までの光景が一瞬頭を過り、これは本格的に不味いと思い俺は逃げるように部屋を後にしようとした、でも日本はそんな俺の状態を知らずに小首を傾げて俺にとんでもない言葉を投げつける
「いぎりすさんも、いっしょにねましょう?」
その瞬間、頭の中が真っ白になる、理性が、焼き切れる音がした
日本を強引に突き飛ばしベッドに押し倒すと衝動的に口付ける、日本がそれに抵抗してきたが俺は片手で日本の押さえ頭上に纏め上げる、何度も角度を変えて時々舌でそのやわらかな唇を堪能するように舐め上げて夢にまでみたその感触に酔いしれる、酒よりもよっぽど俺を悪酔いさせるそれに夢中になりながら日本の体のラインを確かめるように手でなぞればびくりと日本の体が跳ねた、やばい、止まらない、息継ぎに唇を離すその瞬間すら惜しくて唇を離した後再び口付ければ無防備に日本の唇はうっすらと開いていてためらうことなく俺は舌をそこへ差し入れる、薄くひらひらとした日本のそれと自分のを絡めあわせて、隅々まで舌を這わせて最後に上顎を舌で撫でれば日本はびくん、と魚のように体を跳ねさせた、その反応にたまらず日本の中心へと手が伸びかけた時俺はようやく我に返って日本を解放する、日本は余程苦しかったのか大きく口を開けて荒い呼吸を繰り返している、その様子にまた俺の体がどくんと一際大きく脈打って俺は日本を抱きしめるとずっと胸に押し留めていた感情を言葉にしてしまう、頭の片隅には駄目だ、やめろ、という自分も居るのにそれを抑える事が出来なかった、吐き出す様に言葉を紡いで日本の様子を伺えば日本は相変わらず心ここにあらずといった感じに俺を見詰め返す、これだけ酔って居れば何を言っても日本は覚えていないだろう、でも愛してると告げる事だけはどうしても出来なかった、もしこの事を万が一日本が覚えていても好き、という言葉ならまだ逃げ道がある、でも一番の理由はその言葉をこんな状況で伝えたくなかった、例えもうそれを言う機会が永遠に来なくとも
言うだけ言って俺は日本の部屋を後にする、あのままでは自分が何をしてしまうか気が気でない、廊下に出てやっと通常の自分を取り戻した時酷い罪悪感を覚えて顔を顰める、酔った相手につけ込んで、手を出した揚句自分の感情まで吐露してしまった、最低だ、俺、冷静になればなるほど自分のした事がどれだけ自分勝手なものなのか、嫌という程思い知らされて俺は自宅に着いてからもベッドの上でひたすら自己嫌悪に陥っていた
2011.09.22
あとがき
(藪蛇のイギリス視点でした、この後島国は延々ベッドの上でお互いの事を考えて眠れない夜を過ごすと思います)