同棲はじめましたの続きです読まれていない方はこちらからどうぞ
今後の事を話し合っていた大日本帝国と大英帝国だったが議論は全く進まず喉が痛くなる程この状況に対する不満を言い尽くし終わる、そこからはひたすら沈黙を貫き通していた両者だったが何も口にせず夜にもなれば腹がすく、屋敷の者は自分達の世話をしない事となっているから食事は自分で作るしかない行動を起こしたのは日帝だった、松葉杖を付き無人の厨房へと行くと調理場に椅子を持って来てそれに座りながら作業を行う体が自由に使えない状態でも料理は普段と変わらぬ出来栄えだったちなみに献立はカレーだ作るのに然程手間はかからない上日持ちもするとの事で日帝はこの料理を選んだ、テーブルに食器を運びワインセラーにあった高そうなワインも失敬して日帝は少し遅めの晩御飯を食べる、シーフードがたっぷりと入ったそれを日帝はあっという間に平らげる、気付けば二皿目を食べていたその時彼は人の気配に気付き厨房の入り口を見るとそこには英帝が立っていた
「ハッ!相変わらず犬のエサみたいなもん食ってんなあ」
先程うんざりする程口論した手前大日本帝国はその言葉に反応せずもくもくとカレーを食べ続ける
「耄碌爺は耳も聞こえないってか?」
「・・・」
全く反応を示さない日帝に舌打ちし英帝はガンッ、とテーブルを蹴り上げる、日帝はカレーの入った皿とワイングラスを上に上げていたので大事には至らない、そのままそれを置き再び食事を始めようとした時ふと相手の事を思い返す、そうだ今大英帝国は両手を負傷している為料理を作るどころか食事をする事だって出来ないのだ、食事をする為には私の手助けが必要不可欠けれどプライドの高い彼の事だそれを言い出せずに今居るに違い無い、自分の気を引こうとしているのはそういう訳かと日帝は口角を上げる
「弱い犬程良く吠える、良い格好ですね大英帝国殿?その様子じゃ自分で食事を作る事も食べる事も出来やしない本当まあ滑稽ですね」
「この性悪爺が・・・」
「また負け犬の遠吠えですか、私が作ったこのカレー差し上げても構いませんがああでも犬のエサでしたっけ、そんなもの彼の大英帝国殿舌に合う筈がありませんよね、それでも万が一食べると言うのならば犬のように口だけ使って食べて下さい嘲笑ってあげますよ」
日帝の言葉に英帝は盛大に舌を打ち鳴らし踵を返そうとするがそれを引き止めたのもまた日帝の言葉だった
「・・・と言う程私も非情ではありません」
日帝は新しく皿と食器を出しカレーを入れ自分の前の席に置く、松葉杖を付きながらの作業だったので少し時間がかかったが英帝は入口に立ったまま動かないでいた、日帝が目で促し嫌々という風を装い英帝は大人しく席に着く、置かれたカレーと食器を前にしても手を動かせないでいる英帝を見て日帝はああ本当に全く使えない状態なのかと思い、何故自分がこの男をの世話をせねばならないと今日何百回も心中で呟いた言葉を繰り返し英帝側に置いたスプーンを手に取りカレーを掬う
「ほら、食べなさい」
口元に差し出せば、思いっきり英帝の眉間に皺が寄る、まるで毒物でも出された時のような反応だ、まあそうだろう誰が好き好んで気に食わない相手に食事の世話などされたいと思うだろうか、だがそれはこちらとて同じ事、時間をかけただけお互いの不快指数が上がるのだからどうせならさっさと食べ終えて欲しい
「毒など入ってませんよ」
英帝は噛み付くようにスプーンを口に入れそれを私は引き抜く、咀嚼してこくりと喉が動いた後、相手は小声でまあ食えなくもない、と呟く、彼の口から皮肉や罵り以外の言葉を初めて聞いたかもしれない、最もここでそんな台詞を言えるほど彼の立場は良いものでは無いがそれにしても意外だった、言葉には答えず私は再びカレーを掬いスプーンを差し出す、今度は時間をおかずぱくりと口内にそれを入れた英帝は顔を反らし咀嚼する、よくよく観察してみれば彼の耳がほんのりと赤みを帯びている、そうさせているのは屈辱か羞恥か、あるいはその両方か、相手の素直な反応に、可愛い所もあるものだ、と途端早く終わらそうと考えていた食事の世話をするのが楽しくなった、こうした反応が見られるのならば世話をするのも一興か早く終わらせてしまうのは勿体無い、相手が飲み込んだのを確認すると私はカレーを掬う、但しその後スプーンを私の口元へ運び息を吹きかけ温度を下げるというオプションを付けて相手にスプーンを向ければ相手は不快だというように眉間に皺が寄せたが耳の赤みはますます酷くなっている、何よりもそれが素直に英帝の感情を表しているのを見て私は愉快になる、初なものだなあ、と年寄りくさい事を思いながらまるで雛にえさをやる親鳥の気持ちで食事の世話をする、そういえば英帝と食事を共にしてこのように機嫌が良いのは初めての事だ、それは相手の口が汚い言葉を吐き出さないからかもしれない、攻撃されなければこちらも攻撃するつもり等無い
機嫌の良い日帝と対照的に不機嫌そうな英帝の奇妙な食事は皿が空になるまで続けられた
2011.08.20
あとがき
(ダイエーが不機嫌なのは照れ隠しです、どちらも譲らぬままだと進展しないのでここは帝国島国の年上の方に折れてもらいました)